グッピーと10年 その1

小さなプラスチックの虫かごに入れられた、彼らが家にやってきたのは2014年の初冬のことでした。

その頃、インターハイ予選を最後に5年間のバレーボール活動を終えた長女は、未練はないとばかり受験勉強に没入し、近所の学習塾(元教師が自宅で教えていた)に通っていました。

「先生の奥さんから『増えすぎて困ってるから、つがい二組持って帰って』と半ば強引に渡された」と話す長女の声は、その胸元に身を潜める彼らの様に心細げでした。

担当者を決める家族会議が開かれ、

次女:「私、部活あるから絶対むり」

長女:「幼稚園のとき、うさぎの餌やりをしたことがあります」

妻 :「以前、実家でコリーを飼っていました」

テーブルの上の彼らは、少し落ち着いたのか、もはや諦めたのか、今はその綺麗な尾ひれをひらひらさせています。

かろうじて、小学一年のとき金魚のしいくがかりだった私に、白羽の矢が立ったのは言うまでもありません。

このようにして、私と彼らとの生活が始まりました。