9月1日 防災の日に④
発災から1年4か月、新社屋が完成し、一見すると私たちに震災前の日常が戻って来たように見えましたが、内では目に見えない問題を抱えていました。
会社は、別の場所に新社屋を建てるため多額の借入金を抱えることになり、総務部長を欠いていました。
発災直後に陣頭指揮を執った部長と、愛媛にいた社長との間に生じた軋轢が原因でした。余震が続く中、部長は社員とその家族の安全を優先し、社長は会社の資産の保全を優先したため意見が対立し、感情的になった二人の間の溝は、二度と埋まることはありませんでした。
彼らに限らず、震度7に揺られた者と、震度3に揺られた者との間に生じた微かな亀裂は、絶対的なものとして両者を分け隔てました。
会社の棄損したバランスシートは修復可能ですが、一度均衡を失った私たちの心のバランスの修復には、多くの時間の経過が必要に思われたのです。